No. 105

ユニークネス

好きを重ねた跡に、その人だけの形が浮かぶ

You can’t connect the dots looking forward; you can only connect them looking backwards.

先を見ながら点と点をつなぐことはできない。振り返ったときにはじめて、つなぐことができる。

Steve Jobs, Stanford Commencement Address, 2005

Episodeカリグラフィーの教室

大学をやめた一人の若者が、それでもしばらく、気の向いた授業だけにもぐりこんでいました。その一つが、文字を美しく書くカリグラフィーの授業です。書体の違い、文字と文字のあいだの空き、美しい文字組みとは何か。役に立つあてなど、どこにもありませんでした。

十年たって、彼は仲間と新しいコンピュータをつくります。そのとき、あの教室で覚えたことがよみがえり、そのコンピュータは、美しい書体と字間を備えた最初の一台になりました。のちにスティーブ・ジョブズは、あの寄り道がなければ、それは生まれなかっただろうと語っています。点と点は、先を見ながらではつなげない。振り返ったときにはじめて、つながるのだと。

振り返ると、一本の線 ばらばらに散らばった点を、左から右へ、くねくねと寄り道しながら一本の線がつないでいる。右端の「いま」から振り返ると、その線が一つの道になっている。 いま そのときどきの「好き」が、振り返ると一本の道になる
寄り道の点を、あとからつなぐ線

Meaning好きの繰り返しが、その人の形になる

その瞬間、その瞬間に好きなことをやっていく。一つひとつは、気まぐれな寄り道にしか見えません。けれどそれを繰り返すうちに、ほかの誰とも重ならない組み合わせが、少しずつ積み上がっていきます。

一つの好きは、ありふれたものかもしれません。けれど、その好きと、別の好きと、また別の好きが一人の中で重なったところは、世界にたった一つしかありません。ユニークさは、探して見つけるものではなく、好きを重ねた跡に、あとから浮かび上がってくるものです。

Meaning寄り道は、ユニークであるとき価値になる

みんなが同じ道を急いでいるとき、寄り道は遅れに見えます。けれど、その寄り道が自分にしかできないものなら、話は変わります。誰もが通る道で拾えるものは、誰もが持っている。誰も寄らない場所で拾ったものだけが、あとで、ほかの誰にも出せない価値になります。

So whatいまの好きを、手放さない

役に立つかどうか分からないことに時間を使うのは、ときどき不安になります。まっすぐ進んでいる人を見ると、なおさらです。

けれど、点は先を見ながらではつなげません。いま好きなことを、いま好きなだけやってみる。その寄り道の一つひとつが、振り返ったとき、自分にしか描けない一本の線になっている。ユニークさとは、そうして好きを重ねてきた時間そのものなのだと思います。

Sources

  1. Steve Jobs, Commencement Address, Stanford University, 2005-06-12