No. 44
学習する組織
人を責めずに、仕組みを見る
Today’s problems come from yesterday’s “solutions.”
今日の問題は、昨日の「解決策」から生まれる。
Peter M. Senge, The Fifth Discipline, 1990
Episodeビールの在庫ゲーム
四人が一列に並んで、ビールを売る店、卸、問屋、工場の役を受け持つゲームがあります。それぞれは、すぐ隣の相手とだけ注文をやりとりし、ほかの人の様子は見えません。あるとき、店の客の注文が、ほんの少しだけ増えます。
店は、品切れを恐れて多めに注文します。卸は、それを見てさらに多めに。問屋も、工場も。届くまでに時間がかかるので、足りない、足りないと注文を重ね、やがて倉庫はビールであふれかえる。ゲームが終わると、たいていの人は、ほかの誰かのせいだと言います。けれど、誰が演じても、ほとんど同じことが起こるのです。人を責めても、何も変わりません。そうさせているのは、注文と遅れがつながった仕組みのほうでした。
Origin五つの鍛錬
経営学者のピーター・センゲは、このゲームを手がかりに、組織が学びつづけるための条件を考えました。彼が挙げたのは、五つの鍛錬です。一人ひとりが自分の望むものを深め続ける、自己マスタリー。自分の思いこみに気づく、メンタル・モデル。みんなで目指す姿を分かちあう、共有ビジョン。語りあいながら一緒に考える、チーム学習。
そして五つめが、それらを束ねるシステム思考です。出来事を一つずつ見るのではなく、それらがどうつながり、どう影響しあっているのかを見る。この五つめの鍛錬があってはじめて、ほかの四つは一つの力になる、とセンゲは言いました。
Meaningゴムひもの張り
センゲは、学びを生むもう一つの力として、思い描く姿と、いまの姿とのあいだに生まれる張りを挙げました。二つのあいだに、一本のゴムひもを渡したところを思い浮かべてみてください。ひもがぴんと張っているとき、そこには力が生まれます。
張りは、ときに居心地の悪さになります。人はその居心地の悪さから逃れようとして、つい、思い描く姿のほうを下げてしまう。けれどそれでは、ひもがゆるむだけで、いまの姿は少しも動きません。いまの姿をまっすぐ見つめ、思い描く姿を手放さずにいるとき、張りは、前へ進む力になります。
So what人を責めずに、仕組みを見る
うまくいかないことが起きると、私たちはつい、誰かのせいにしたくなります。あの人の判断が遅かった、あの部署が多く頼みすぎた。けれど、同じ仕組みの中に置かれれば、誰でも同じようにふるまってしまうことがあります。
だから、人を責める前に、仕組みのつながりを見る。そして、思い描く姿を下げずに、いまの姿と向きあいつづける。一人ではなく、みんなでそれを続けられる組織が、学びつづける組織なのだと思います。
Sources
- Peter M. Senge, The Fifth Discipline: The Art and Practice of the Learning Organization, 1990。邦訳『学習する組織 ― システム思考で未来を創造する』英治出版