No. 06

問いを生きる

答えを探さずに、問いを持ち歩く

Leben Sie jetzt die Fragen. Vielleicht leben Sie dann allmählich, ohne es zu merken, eines fernen Tages in die Antwort hinein.

いまは、問いを生きてください。そうすればいつか遠い日に、自分でも気づかないうちに少しずつ、答えの中へ生き入っているかもしれません。

Rainer Maria Rilke, Briefe an einen jungen Dichter, 1903

Episode若い詩人からの手紙

軍の学校に通う十九歳の青年が、自分の書いた詩を封筒に入れて、ひとりの詩人に送りました。私の詩はよいのでしょうか。詩人になってもよいのでしょうか。

返事を書いたのは、まだ二十代の詩人ライナー・マリア・リルケでした。彼は詩の出来を判定しませんでした。外に答えを求めるのをやめて、自分の内側へ降りていきなさい、と書きます。手紙はそれから五年にわたって行き来し、そのうちの一通に、この一節がありました。心の中の解けないことすべてに辛抱強くあり、問いそのものを、鍵のかかった部屋や、知らない言葉で書かれた本のように愛してみてください、と。

Origin答えを、いまは探さない

リルケは、いますぐ答えを探すことを勧めませんでした。答えは、いまのあなたには与えられない。なぜなら、あなたはまだそれを生きることができないからだ、と。答えは考えて手に入れるものではなく、生きているうちに、いつのまにかその中にいるものだというのです。

青年の手元に残った十通の手紙は、リルケの死後に一冊の本になりました。答えを渡さなかった手紙が、それから百年近く、迷っている人たちに読まれつづけています。

Meaning問いは、持ち歩くもの

問いを生きるとは、問いを放り出すことではありません。答えが出ないことを嘆くのでも、ひとまず決めてしまうのでもなく、問いを手放さずに暮らしの中へ持ち歩くことです。

持ち歩いているうちに、問いは少しずつ形を変えます。読んだ本の一行、誰かのふとした言葉、季節の移り変わりが、問いに触れていく。そうしてある日、答えを見つけたというより、問いがもう問いでなくなっていることに気づく。答えは、出すものというより、育つものなのかもしれません。

So what答えより先に、問いを大事にする

すぐに答えの出る問いは、たいてい、それほど大きな問いではありません。どう生きたいか、何を大事にしたいか。大きな問いほど、急いで出した答えは、借りものになりがちです。

いま答えられない問いを、無理に閉じずに、そっと抱えておく。問いを書きとめて、ときどき読み返す。その問いと一緒に過ごした時間が、いつか、自分だけの答えの形になっていくのだと思います。

Sources

  1. Rainer Maria Rilke, Briefe an einen jungen Dichter, 1929(1903 年 7 月 16 日付の手紙)
  2. リルケ『若き詩人への手紙・若き女性への手紙』高安国世訳、新潮文庫