No. 22
ライト、ついてますか?
答えを命じず、問いを手渡す
A problem is a difference between things as desired and things as perceived.
問題とは、望まれた状態と、認識された状態とのあいだの差である。
Donald C. Gause, Gerald M. Weinberg, Are Your Lights On?, 1982
Episodeトンネルの出口の標識
山あいの長いトンネルの入り口に、「ライトをつけよ」という標識が立てられました。運転する人たちは素直にライトをつけて走ります。ところが、トンネルを抜けたすぐ先には、湖を見下ろす美しい展望台がありました。車を止めて景色を眺め、戻ってくると、ライトがつけっぱなしで、バッテリーが上がっている。そんな車が次々に現れたのです。
出口に「ライトを消せ」と書けばいいかというと、そうもいきません。夜なら、消されては困る。霧の日もある。考えられるかぎりの場合を書き並べた長い標識は、走りながらでは読めません。最後に出口に立てられたのは、たった一言の標識でした。「ライト、ついてますか?」
Origin問題とは、差である
ドナルド・ゴースとジェラルド・ワインバーグは、この話を、問題を見つけることについての本の題にしました。二人は、問題とは、望んでいる状態と、いま見えている状態との差だ、と言います。だから、同じ出来事でも、何を望むかによって問題の形は変わり、誰の目から見るかによって、問題があるかどうかさえ変わります。
二人は、問題を解こうとする前に、立ち止まって問いかけることを勧めます。そもそも何が問題なのか。それは誰の問題なのか。その問題は、本当に自分が解くべきものなのか。急いで答えを出すほど、解かなくてよい問題を、上手に解いてしまうことがあるからです。
Meaning答えではなく、問いを手渡す
出口の標識が見事だったのは、運転する人に答えを命じなかったところです。昼なのか夜なのか、止まるのか走りつづけるのか。それを知っているのは、運転している本人だけです。標識は、その人がすでに持っている判断の力を、一言の問いで呼び起こしただけでした。
問題を抱えている人は、たいてい、その問題をいちばんよく知っている人でもあります。外から答えを押しつけるより、その人が自分で気づけるように、問いを置いておく。そのほうが、ずっと短い言葉で、ずっと多くの場合に、うまく働くことがあります。
So what解く前に、問いかける
問題を前にすると、私たちはすぐに答えを探しはじめます。けれど、その問題が誰のもので、何と何の差なのかを確かめないまま走りだすと、標識だらけの、読めない答えをつくってしまう。
多くの問題には、ただ一つの正解がありません。昼に走る人と夜に走る人とでは、正しいふるまいが違うように。けれど、正解はなくても、正しい問いはあります。その問いさえ置けば、一人ひとりが、自分にとっての答えにたどり着ける。
だから、解く前に、まず問いかけてみる。そして、ときには答えの代わりに、問いを相手に手渡してみる。たった一言の「ついてますか?」が、千の指示よりもよく働く場面が、仕事にも暮らしにも、きっとあるのだと思います。
Sources
- Donald C. Gause, Gerald M. Weinberg, Are Your Lights On? How to Figure Out What the Problem Really Is, 1982。邦訳 ドナルド・C・ゴース、G・M・ワインバーグ『ライト、ついてますか ― 問題発見の人間学』木村泉訳、共立出版