No. 46
ハイ・コンセプト
答えの先に、意味と物語をつくる
The future belongs to a very different kind of person with a very different kind of mind.
未来は、まったく違う種類の心をもった、まったく違う種類の人のものになる。
ダニエル・ピンク『ハイ・コンセプト』(2005)
Episode弁護士と、芸術家の学位
作家のダニエル・ピンクは、自分の育った時代を振り返って書いています。親たちはこぞって、子どもに弁護士か医者か会計士になれと言った。数字に強く、筋道を立てて考え、正しい答えを早く出せる人が、いちばん報われる時代だったからです。
けれどピンクは、その時代が終わりかけていると見ました。ものはあふれ、人々は機能だけでは選ばなくなった。手順の決まった仕事は、遠くの国の人に頼めるようになった。そして計算できることは、機械がもっと速く、もっと安くこなすようになった。豊かさ、遠くの国、機械。この三つの力に押されて、筋道だけで勝てる場所は、少しずつ狭くなっていく。
そこで彼は、半ば挑発するように言いました。これからは、芸術の学位が、新しい経営の学位になる、と。
Meaning六つの感覚
ピンクは、次の時代に求められる力を、二つの言葉でまとめました。ハイ・コンセプトは、ばらばらのものを組み合わせて、まだない新しいものを思いつく力。ハイ・タッチは、人の心の動きを感じとり、ふだんの暮らしの中に喜びや意味を見つける力です。
そしてその中身を、六つの感覚に分けました。機能だけでなく、デザイン。議論だけでなく、物語。部分だけでなく、全体をまとめるシンフォニー。論理だけでなく、共感。まじめさだけでなく、遊び。モノだけでなく、生きがい。どれも、論理を捨てろという話ではありません。論理を土台にして、その上に積む力です。
So what答えの先に、意味を置く
正しい答えを早く出す力は、これからも要ります。けれど、正しい答えが誰にでも手に入るようになるほど、違いを生むのは、その答えをどんな物語に乗せ、誰の気持ちに届け、どんな意味を持たせるか、のほうになります。
資料を一枚つくるときにも、数字の正しさの先に、読む人の顔を思い浮かべる。部分を磨くだけでなく、全体がどう響きあうかを眺める。仕事のあいまに、遊ぶ余白を残しておく。機械が答えを出してくれる時代に、人に残るのは、答えに意味を与える仕事なのだと思います。
Sources
- Daniel H. Pink, A Whole New Mind: Moving from the Information Age to the Conceptual Age, Riverhead Books, 2005。邦訳 ダニエル・ピンク『ハイ・コンセプト 「新しいこと」を考え出す人の時代』大前研一訳、三笠書房