No. 24

好奇心サイクル

崩れたモデルが、次の問いになる

Knowing that you might be wrong is the first step toward undoing an assumption and finding the right solution to a problem.

自分が間違っているかもしれないと知ること。それが、思いこみをほどき、問題の正しい答えを見つけるための第一歩になる。

Jonathan Mugan, The Curiosity Cycle

Episode開かないドア

小さな子どもが、ドアの前に立っています。取っ手を握って、ひねって、引く。ドアが開く。何度か繰り返すうちに、子どもは一つのことを覚えます。取っ手をひねれば、ドアは開く。

ところがある日、同じように取っ手のついたドアが、引いても開きません。押すドアだったのです。子どもは首をかしげ、押したり、引いたり、横に滑らせたりしてみる。そのとき子どもは困っているのではなく、楽しんでいます。思ったとおりにいかないことが、新しい遊びになっているのです。

Origin概念、モデル、テスト

人工知能の研究者ジョナサン・ミューガンは、子どもが世界を知っていく道すじを、好奇心のサイクルとして描きました。登場するのは三つです。感覚から得られるかけらとしての概念(ドアノブ)。かけらをつないで、ものがどう動くかを説明するモデル(取っ手をひねればドアが開く)。そして、そのモデルが本当に通用するかを確かめるテスト(いろいろなドアを開けてみる)。

好奇心のサイクル 三つの言葉が円を描いて矢印でつながる。上は「概念」、右下は「モデル」、左下は「テスト」。テストからモデルが崩れると、円の中心に「なぜ?」が生まれ、新しい概念へ戻っていく。 概念 ドアノブ モデル ひねれば開く テスト 開けてみる なぜ? 通用しないモデルが、次の好奇心になる
概念をつないでモデルにし、テストで確かめる。崩れたところから、次の問いが生まれる

モデルは、いつも通用するわけではありません。通用しないモデルに出会ったとき、子どもは新しい概念を学び、モデルは前よりも確かなものになります。好奇心は、不完全なモデルから湧いてくるのです。なぜ、こうならないのだろう、と。

Meaning大人には、不快に感じられる

大人になっても、モデルが完全になることはありません。取っ手がついているのに押すドアも、押す板がついているのに引くドアも、世の中にはたくさんあります。けれど大人は、子どものようには楽しめません。何度もテストを重ねて、もう確かだと思っているモデルが崩れると、それは好奇心ではなく、苛立ちになります。

デザインの研究者ドナルド・ノーマンは、頭の中のモデルの大切さを、こう書いています。

概念モデルは、理解を助けたり、モノの動きを予測したり、モノが予定通りに動かないときにどうすればよいのかを知るのに役に立つ。良い概念モデルがあると、自分の行為の結果を予測できるようになる。良いモデルがないときには、機械的にやみくもに操作しなくてはならなくなる。言われた通りにしかできない。(中略)でも、なにかまずいことが生じたり新しい状況に直面した時などには、より深い理解、すなわち良いモデルが必要になる。

— D. A. ノーマン『誰のためのデザイン?』

作り手が描いたモデルと、使う人の頭の中のモデルが食い違うと、使う人はやみくもに操作するしかなくなります。そしてもう一度テストをやり直し、覚え直さなければなりません。使いにくさとは、その学び直しの重さのことなのかもしれません。

So what使う人より先に、テストする

子どもにとって、崩れるモデルは学びのきっかけです。けれど、すでに確かなモデルを持つ人にとっては、つまずきになります。だから、使う人がそれに気づく前に、作り手のほうが、自分のモデルは間違っているかもしれないと疑って、先にテストしておく必要があるのだと思います。

そして作り手自身は、子どものほうの構えでいたい。自分のモデルが崩れたときに、苛立つのではなく、なぜだろうと面白がる。そこから、次のよいモデルが生まれてきます。

Sources

  1. Jonathan Mugan, The Curiosity Cycle: Preparing Your Child for the Ongoing Technological Explosion
  2. D. A. ノーマン『誰のためのデザイン? 増補・改訂版 ― 認知科学者のデザイン原論』岡本明ほか訳、新曜社、2015
  3. 書き手の note「こどもの学習過程と、UI設計におけるモデルのテスト」(2020)をもとに書き直したもの