No. 89
自覚的なインタラクション
反応と応答のあいだの、一拍
Between stimulus and response, there is a space. In that space is our power to choose our response. In our response lies our growth and our freedom.
刺激と反応のあいだには空間がある。その空間に、反応を選ぶ力がある。その応答のなかに、私たちの成長と自由がある。
Stephen R. Covey ほか First Things First, 1994, p.59
Episode図書館の三行
スティーブン・コヴィーは、研究休暇(サバティカル)をハワイで過ごしていたころ、大学の図書館の書架で何気なく一冊を開き、三行の文章に出会いました。その三行に打ちのめされた、と彼はのちに書いています。
けれど、著者の名前は控えていませんでした。後年ハワイを訪ねたとき、出どころを確かめに図書館へ戻ってみると、その建物はもうなかったそうです。冒頭の言葉は、出どころの分からないまま世界を回りました。あとから探した人たちがいちばん近いと見たのは、心理学者ロロ・メイが自由について書いた、この一節です。
Freedom is the individual’s capacity to know that he is the determined one, to pause between stimulus and response and thus to throw his weight, however slight it may be, on the side of one particular response among several possible ones.
自由とは、自分が条件づけられた者であると知り、刺激と反応のあいだで一拍おいて、ありうるいくつもの応答のうちの一つの側に、たとえわずかでも自分の重みをかける力である。
— Rollo May, “Freedom and Responsibility Re-Examined,” 1963
Origin手を動かしながら、自分を見る
同じことを、仕事の現場から考えた人がいます。ドナルド・ショーンは、さまざまな専門職が実際にどう考えながら働いているのかを事例で追い、優れた専門家は、行為のさなかに省察している、と論じました。
ショーンによれば、実践者は、不確かで一回きりの状況に出会うと、驚きや戸惑いを押し殺さずに感じとります。そして、目の前で起きていることと、自分のふるまいに知らず知らず含まれていた「それまでの理解」とを、その場で省みる。省みたうえで、次の一手を試してみるのです。
Meaning反応している自分を、反応しながら見る
自覚的なインタラクションとは、自分がいま何に、なぜそう反応しているのかを見ながら、人とやりとりすることです。反応と応答は、似ていて違います。反応は刺激に押されて出てくるもので、応答は選んで返すものです。
反応が速いのは、そこに「それまでの理解」がもう組みこまれているからです。こう言われたら、こう返す。こういう人は、こういうものだ。ショーンの言う、ふるまいに暗に含まれた理解です。自分で選んだつもりの返事も、たいていはこの古い理解が先に返しています。
メイの言葉が面白いのは、自由のありかを、条件づけられていると知ることに置いた点です。条件づけから逃れられなくても、自由はある。いま自分は何に押されているのか。それが見えたとき、はじめて別の応答に重みをかけられる。驚きや引っかかりは、その古い理解が状況と合わなくなった知らせです。だから、まずは感じたまま見ます。
So what休符も、音楽の一部
合奏では、自分の音を出していないあいだも演奏は続いています。相手の音を聴き、次の一音を選んでいる。休符は、止まっている時間ではありません。
強い言葉を受けたとき、引っかかりを覚えたときは、返す前に一拍だけ、いま自分は何に反応しているのかを見る。その違和感は、言葉にすれば判断の手がかりになり、相手をやりこめる前に、自分の見立てを差し出す余白にもなります。
Sources
- Stephen R. Covey, A. Roger Merrill, Rebecca R. Merrill, First Things First, 1994, p.59
- Alex Pattakos, Prisoners of Our Thoughts, 2008, Stephen R. Covey による序文 p.viii(三行、著者名を控えなかったこと、図書館の建物がなくなっていたこと)
- Quote Investigator, “Between Stimulus and Response There Is a Space,” 2018-02-18。コヴィーの回想(The 7 Habits of Highly Effective People, 1989, pp.309–310/Pat Croce Lead or Get Off the Pot! 序文, 2004/Alex Pattakos Prisoners of Our Thoughts 序文, 2008)とロロ・メイの一節を引く quoteinvestigator.com/2018/02/18/response/
- Rollo May, “Freedom and Responsibility Re-Examined,” in Behavioral Science and Guidance: Proposals and Perspectives, 1963, p.103
- Donald A. Schön, The Reflective Practitioner: How Professionals Think in Action, Basic Books, 1983, p.68(内容は infed.org “Donald Schön: learning, reflection and change” に引かれた一節による infed.org(アーカイブ))