No. 66
アッサンブラージュ
ばらばらのまま、一つにはたらく
Episode箱の中の小さな世界
二十世紀の半ば、ニューヨークに、ジョゼフ・コーネルという男がいました。昼間は布地の売り込みなどで町を歩き、古道具屋や古本屋に立ち寄っては、気になるものを買い集める。色あせた鳥の絵、ビー玉、古い地図、時計のぜんまい、ホテルの広告。家に帰ると、母と弟と暮らす家の地下室で、それらを小さな木の箱の中に並べました。
ばらばらに見れば、ただのがらくたです。けれど箱の中に置かれると、ビー玉は惑星になり、地図は夢の旅になり、鳥の絵は誰かの記憶になる。コーネルの箱は、拾い集めたものたちが寄りあって、一つの小さな世界をつくっていました。のちに、こうした作品はアッサンブラージュと呼ばれるようになります。
Origin寄せ集めることば
アッサンブラージュは、フランス語で「寄せ集めること」「組み立てること」を意味します。美術の世界では、絵の具で描くかわりに、拾ったものや既製品を組み合わせて作品にするやり方を指すようになりました。
この言葉は、哲学でも大切な役目を持っています。ドゥルーズとガタリは、異なる種類のものが寄りあって、一つのはたらきを生む結びつきを、この言葉で捉えようとしました。人と馬と鐙が寄りあうと、騎兵という一つのはたらきが生まれる。人と道具と言葉と場所が寄りあうと、一つの工房が生まれる。大事なのは、部品そのものより、部品どうしの結びつき方です。
Meaning部分は、取り外せる
アッサンブラージュには、ふつうの全体とは違う性質があります。生きものの体のような全体では、心臓を取り出せば、心臓はもう心臓としてはたらきません。部分は全体に溶けこんでいます。
アッサンブラージュの部分は、そうではありません。コーネルの箱からビー玉を取り出しても、ビー玉はビー玉のままで、別の箱に入れれば、また別の世界の一部になります。部分は自分の来歴を持ったまま、結びつきの中に入り、また出ていける。だからアッサンブラージュは、いつでも組み替えられ、外から新しいものを迎え入れられる、ゆるやかでしなやかな全体なのです。
ブリコラージュが、手もとのものでつくる手つきのことだとすれば、アッサンブラージュは、つくられたものが、ばらばらのまま一つにはたらいている、そのあり方のことだと言えるかもしれません。
So what結びつき方を、デザインする
チームや仕事のしくみを考えるとき、私たちはつい、優れた部品を集めればよいと考えます。腕のいい人、よい道具、正しい手順。けれど、同じ部品でも、結びつき方が変われば、生まれるはたらきはまるで変わります。
一人ひとりが自分の来歴を持ったまま寄りあい、必要なら外れ、また別の組み合わせに加わる。そういうゆるやかな寄せ集めの中から、思いもよらない世界が立ちあがることがある。箱の中のビー玉が惑星になったように、ものの値打ちは、何と並べられるかで変わっていくのだと思います。
Sources
- Gilles Deleuze, Félix Guattari, Mille plateaux, Minuit, 1980。邦訳 ジル・ドゥルーズ、フェリックス・ガタリ『千のプラトー』河出文庫
- Manuel DeLanda, A New Philosophy of Society: Assemblage Theory and Social Complexity, Continuum, 2006。邦訳 マヌエル・デランダ『社会の新たな哲学 集合体、潜在性、創発』人文書院
- Joseph Cornell の箱の作品(1930〜60年代)。William C. Seitz, The Art of Assemblage, Museum of Modern Art, 1961