No. 48
パタン・ランゲージ
心地よさに、名前をつける
Episode窓辺の場所
日の当たる窓辺に、腰かけられる小さな場所がある部屋を思い浮かべてみてください。本を読むとき、お茶を飲むとき、人は自然とそこへ引き寄せられます。反対に、大きな窓があるのに、その前に座る場所のない部屋では、どこか落ち着かない。光のほうへ行きたいのに、そこにとどまる場所がないからです。
建築家のクリストファー・アレグザンダーは、こうした小さな心地よさを一つずつ取り出して、言葉にしていきました。どの部屋にも、窓辺に腰を落ち着ける場所を。どの部屋にも、二つの方向から光を。人がなぜかほっとする場所には、くり返し現れる形がある。彼はそれを「パタン」と呼びました。

Origin心地よさの、言葉
アレグザンダーと仲間たちは、町の広がり方から、通りや広場、家の間取り、窓辺の腰掛けにいたるまで、二百五十あまりのパタンを一冊にまとめました。一つひとつのパタンには、そこでくり返し起きる問題と、その問題を解く形の芯が、短く書かれています。
パタンは、言葉の単語のように組み合わせて使います。単語を並べて文をつくるように、いくつかのパタンをつないで、一つの家や一つの通りを形づくる。彼がこれを「パタン・ランゲージ」と名づけたのは、建築家だけでなく、そこに住む人たちが自分の手で、自分の場所をつくれるようにしたかったからです。
Meaning名づけえぬ質
アレグザンダーは、生き生きとした町や家には、言葉にしきれない共通の質があると考え、それを「名づけえぬ質」と呼びました。美しい、心地よい、生きている。どの言葉も少しずつ当たっていて、どれも足りない。パタンは、その名づけえぬものに、少しずつ近づくための手すりでした。
この考え方は、建築の外にも広がっていきました。ものをつくる人たちが、うまくいった形に名前をつけ、互いに手渡し、組み合わせて使う。誰か一人の才能に頼らず、多くの人の経験から生まれた知恵を、共有できる言葉にしておく。パタン・ランゲージは、つくることをみんなの手に渡すための、言葉の道具なのです。
So what心地よさに、名前をつける
なぜかほっとする場所、なぜか使いやすい道具、なぜかうまくいく集まり。私たちはそれを、たまたまだと思って通りすぎてしまいます。
けれど、その「なぜか」に、立ち止まって名前をつけてみる。どんな問題があって、どんな形がそれを解いていたのか。名前をつけた心地よさは、次の場所で、別の誰かの手で、もう一度つくり直すことができる。そうして手渡された小さな言葉が重なって、町も暮らしも、少しずつ生き生きとしていくのだと思います。
Sources
- Christopher Alexander ほか, A Pattern Language: Towns, Buildings, Construction, Oxford University Press, 1977。邦訳『パタン・ランゲージ ― 環境設計の手引』鹿島出版会
- Christopher Alexander, The Timeless Way of Building, 1979。邦訳『時を超えた建設の道』鹿島出版会
- Vilhelm Hammershøi, Sunshine in the Drawing Room III, 1903。 Commons(パブリックドメイン)